正門 > 戯の間 > D&D > 魔法のアイテム:消費経験点を譲渡する ]

魔法のアイテム:消費経験点を譲渡する

コーリャ・レイヴン・リケット著

以下の記事は魔法のアイテムを作成する(そして経験点の消費に苦労している)ウィザードのためのものである。一方、アーティフィサーは経験点消費を相殺するための作成ポイントを毎レベル受け取る。彼らの作成ポイントが尽きた場合、彼らも以下のオプションを考慮するかもしれない。

アイテム作成特技か呪文修正特技をボーナス特技として得ることができるウィザードが、モンスターから得た財宝の中に“役立つ”物が無かった時、彼らの多くは地面を見つめることになるだろう(パーティの仲間が欲しい物をあつらえなければならない)。PCはふつう特に制約を受けることなく金貨を貯めて使うことができるが、冒険者は彼らの経験点を自発的に分けることはできない。ウィザードはアイテム作成特技と前提呪文を満たすことで、彼らの仲間が欲しがる魔法のアイテムを作成できる可能性を持つ。しかし、彼らが頻繁に経験点を使うことを察するに、こういった質問が行なわれるだろう「君はパーティの平均レベルから遅らせる気はあるかね?」。ウィザードたちがアイテム作成特技を無視することは無理からぬことであり、(たとえば)《魔法の武器防具作成》の要求が行き過ぎれば彼らはうんざりするだろう。そして、ウィザードはしばしば《スタッフ作成》や《ワンド作成》を選び、労役を行なわされないようにする(これはもちろん、これら特技が彼らの役に立つからであるが)。

それでも、想定される所有者が簡単に経験点消費を肩代わりできる方法があれば、ウィザードは《魔法の指輪作成》、《その他の魔法のアイテム作成》や、《魔法の武器防具作成》を習得してもそれほど損をしたと感じなくなるかもしれない。たとえば、パーティのファイターが彼の+2キーン・バスタード・ソードに720経験点を払うなら、ウィザードはレベルを遅らせることなく自分用の+1リターニング・スペル・ストアリング・ダガーを作成することができる。さらに、武器、アイテムと指輪には永続的なものか、使い切りやチャージが消費される呪文解放型アイテムとは違って使用回数が再生する効果を追加することもできる。余分に2000gpと80経験点を支払うことにより、上記のダガーに回数無制限のディテクト・マジックを追加することができるのである(ダンジョン・マスターズ・ガイドのTable 7-33:Estimating Magic Item Gold Piece Values参照)。

ここから先の記事は魔法のアイテムを作成する時に経験点を譲渡するためのゲーム・オプションをいくつか提示している。単純に「ファイターは経験点消費して剣に使います」と宣言するだけで十分かもしれないが、いくつかの考慮すべき問題も含めて以下で解説している。

消費経験点を譲渡するための条件

ルール1に譲渡は自由意志に基づくことと書かれているが、君はこれを出し抜くための手段を持つNPCの悪漢を思いつくかもしれない(結局、ルールなぞ破られるためにあるだって?)。不浄なる暗黒の書にはアーマー・オヴ・ザ・ドレッド・エンペラー(111ページ参照)が紹介されており、それは装備した者に与えられるどんなダメージでも分配できる。似たアイテム(タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスを参照)は悪のウィザードによって使われ、鎖に繋がれた捕虜が消費経験点を彼らに譲渡するかもしれない。

ルール1:魔法のアイテムを作成する時に経験点の譲渡を行なうルールの1つ目は、クリーチャーは譲渡に同意していなければならないことである。強制力をもってこれを行なった場合、魔法的なものや物質的なものを含むどんなやり方でも、経験点の譲渡は自動的に失敗する。魔法のアイテムを作成するために消費経験点を譲渡することは、完全な自由意志の下にある者のみが行なえる。そしてそれは【知力】を3以上持つ者のみが行なえる。

ルール2:さらに、クリーチャーは魔法のアイテムを作成するためにレベルを失うほど多くの経験点を譲渡することはできない。しかし、彼らは新しいレベルを得るのに十分な経験点を得た場合、その経験点を魔法のアイテムの作成に使用してレベルを得るのを先送りにすることができる。

ルール3:最後に、クリーチャーが作成のために経験点を譲渡できる魔法のアイテムは、彼らが習熟しているもの(鎧、盾、そして武器の場合)、起動できるもの(ワンドやその他呪文解放型アイテム[1]の場合)、または使用できるもの(能力値、属性、クラス能力、種族に制限されるもの[1]の場合)に限られる。

[1]クリーチャーは経験点を譲渡するさい、これらの特徴を〈魔法装置使用〉判定で真似ることができる。

消費経験点を譲渡した対価

もし君が魔法のアイテムを購入するさい作成に必要な消費経験点を譲渡することに同意していれば、1経験点につき5gpが最終的な市価から割り引かれる。

注:魔法のアイテムに経験点要素のある呪文を使用している場合、1経験点あたり5gpの割合で市価が上昇する(ダンジョン・マスターズ・ガイドのTable 7-33:Estimating Magic Item Gold Piece Values参照)。

NPCが魔法のアイテムを作成するために必要な消費経験点の譲渡に同意するのは、彼らがパーティに所属する誰かの腹心か従者である場合、または魔法のアイテムを彼らが個人的に使用する場合(たとえば、NPCが魔法のアイテムを購入する時)に限られる。

もしNPCが魔法のアイテムを作成するための消費経験点を譲渡でき、なおかつ同意した場合、このサービスにかかる報酬は1経験点あたり5gpであり、前もって支払われる必要がある。NPCたちにとって経験点は抽象的な概念であるが、これは同意されうる最低の価格である。こと彼らが経験点を譲渡するために必要な複数の条件を満たしている場合、強欲な“性格の”NPCならば恐らくより多くの金貨を求めるだろう。

消費経験点の譲渡を分担する

注:PCが腹心や従者に魔法のアイテムの経験点消費を行なわせるのはいい考えに思えるかもしれないが、それは彼らが単純に自分の経験点を魔法のアイテムの製作者に払うより大きな損失になる。消費は同じだけ(1経験点あたり5gp)だが、腹心や従者は経験点消費分を支払うことでレベルが遅れはじめ、パーティにとって有能な存在ではなくなるだろう。

消費経験点を譲渡するための条件を全て満たすクリーチャーは、その全てか一部を譲渡することができる。一部を譲渡する場合、一般的に25%、50%、そして75%であるが、クリーチャーが指定しただけの経験点である場合もある(基本的には彼らが「ここまで」と言うまで)。最高で5体までのクリーチャーが魔法のアイテムを作成するための消費経験点を分担して譲渡することができ、その内訳は均等にでもでこぼこにでも割り振ることができる。

魔法のアイテムを修理する場合

魔法のアイテムを作成するためのルール全ては、魔法のアイテムを修理する時も適用される。

経験点を移し替えるための方法

ここからは魔法のアイテムの作成者に経験点を譲渡する3つの異なった方法を紹介する。それぞれ微妙に違っており、必要とするものも異なっている。

呪文

経験点を譲渡する最初の方法は、全ての呪文使いが使用できる共通呪文である。この方法は経験点を譲渡する側よりは術者のほうに安全性が確保される。

トランスフィアレンス(譲渡)
共通呪文
レベル:ウィザード/ソーサラー1、クレリック1、ドルイド1、バード1
構成要素:音声、焦点、動作
発動:10分
距離:10フィート
目標:術者を中心とした10フィート半径の爆発
効果:永続(本文参照)
セーヴ:意思・無効(無害)
呪文抵抗:なし

輝くエーテルのきらめきが対象のクリーチャーから立ちのぼり、まばゆい光球に変化し、術者のもとへと向かい、彼の体と一体になる。

この呪文で君は1体以上(5体まで)のクリーチャーから魔法のアイテムを作成するための経験点を譲渡され、保持できる。この呪文によって他のクリーチャーから得られる経験点は、レベルを得るために使用できない。対象となるクリーチャーは、この呪文が発動する前に焦点具要素となっている魔法のアイテムが作成されることに同意していなくてはならない。一度呪文が発動すれば、目標のクリーチャーは経験点をどれだけ譲渡するか決定する。君は魔法のアイテムを作成するのに必要な分より多く経験点を得ることはできない。

さらに経験点が必要となった場合、君はその経験点を君自身が提供するか、必要なだけのさらなる経験点を得るために再びこの呪文を使う必要がある。経験点が余った場合、同率(最初に譲渡された比率に応じて)で対象のクリーチャーに戻される。君が対象となったクリーチャーの1体からでも同意を得られなかった魔法のアイテムを作成しようとした場合、全ての譲渡された経験点はすぐさまそのクリーチャーに戻される。君が作成に同意された魔法のアイテムを作る作業に1日でも費やした場合、魔法のアイテムが完成したかどうかに関わらず経験点は消費される。君が同意された魔法のアイテムを作る作業に1日でも費やした後に新しい魔法のアイテムの作成にかかるならば、経験点は消費され、(魔法のアイテムを作成のルールに従って)失われる。

焦点具:作成に同意された魔法のアイテムの材料(例えば、外套、剣、またはワンド)。

一行:

共通 トランスフィアレンス(焦):クリーチャーが作成に同意した魔法のアイテムに経験点を譲渡する。

魔法のアイテム

経験点を譲渡する2つ目の方法は誰でも使える安価な魔法のアイテムに頼るものである。この方法は魔法のアイテムを作成する側より経験点を譲渡する側に安全性が確保される。

タリスマン・オヴ・トランスフィアレンス(Talisman of Transference/譲渡の呪符)

タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスは作成に同意された魔法のアイテムに経験点を移すための媒体である。

伝説:この道具は経験点を譲渡されておきながら契約を放り出したり完成品を持って逃げ出す作成者から魔法のアイテムの作成を依頼したクリーチャーを守るために作られた(〈情報収集〉難易度20か〈知識(神秘学)〉難易度10)。

説明:タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスは一般的に腕甲、護符もしくは肌に着けられる類の宝飾品の形を取る。

起動:標準アクションで、タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスを作成に同意して作業が行なわれていない魔法のアイテムの材料(例えば、外套、剣、またはワンド)に接触した状態で、装備者は「結べ」という合言葉を唱えて登録を行なう。そして少なくとも1日(8時間)を魔法のアイテムの作成に費やした作成者が、こうして使用されたタリスマン・オヴ・トランスフィアレンスに触れて「満たせ」と唱えることにより効果は発揮される。

タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスは一度にひとつの材料しか登録できない。新しい材料に触れて「結べ」と唱えた場合、古い登録は抹消される。

効果:登録された材料で魔法のアイテムが作成されると、タリスマン・オヴ・トランスフィアレンスは装備者から魔法のアイテムの作成者へ経験点を譲渡する。装備者が魔法のアイテムを作成するために必要な経験点を超過しない限りその全てか一部を譲渡できる。このアイテムを使用する際には経験点の保障や、消費経験点の分担など、経験点を譲渡するために必要な条件は全て満たされていなければならない。

オーラ/術者レベル:微弱、総合。術者レベル1。

作成:《その他の魔法のアイテム作成》、トランスフィアレンス、100gp、16経験点、1日。

重量:1/2ポンド

価格:200gp

儀式特技

3つ目の経験点譲渡手段は、魔法のアイテムの作成者が取得する特技である。この方法では共同作業を行なうため、経験点を譲渡する側と魔法のアイテムの作成者どちらにも同じ程度の安全性を確保できる。

注:これは豆知識。ダンジョン・マスターズ・ガイドには一般的に共同作業が許されているアイテムとして、「作成者はトリトンであるかトリトンの助けを受けている必要がある」と書かれたホーン・オヴ・トリトンが掲載されている。

《譲渡の儀式》/Ritual Transference

君は魔法のアイテムの作成に同意したクリーチャーから経験点を譲渡してもらうことで君が前提条件を満たしていない魔法のアイテムを作成することができる。

前提条件:〈知識(宗教)〉もしくは〈知識(神秘学)〉、魔法のアイテム作成特技1つ。

利益:君は〈知識(宗教)〉か〈知識(神秘学)〉の技能ランクに見合った儀式を行なうことができる。君が〈知識(神秘学)〉でこの特技の前提を満たしているならば、秘術呪文による魔法のアイテム作成時のみ《譲渡の儀式》を使用できる。君が〈知識(宗教)〉でこの特技の前提を満たしているならば、信仰呪文による魔法のアイテム作成時のみ《譲渡の儀式》を使用できる。

譲渡(〈知識(宗教)〉4ランク、もしくは〈知識(神秘学)〉4ランク):君は君の作成している魔法のアイテムに対して同意した1体以上のクリーチャー(最大5体)から経験点の譲渡を受けることができる。この儀式に参加しているいずれのクリーチャーもどれだけ経験点を譲渡するか制御できる。君は作成に同意された魔法のアイテムを作成するために必要な経験点より多く経験点の譲渡を受けることはできない。この儀式に参加するためには経験点の保障や、消費経験点の分担など、全ての経験点を譲渡するための条件を満たしていなければならない。もしもより多くの経験点が必要となった場合、君か儀式に参加しているクリーチャーその経験点を必要に応じて提供せねばならない。より少ない経験点で済んだ場合、余剰分は同率(最初に譲渡した比率に応じて)で君や儀式に参加したクリーチャーに返却される。君が対象となったクリーチャーの1体からでも同意を得られなかった魔法のアイテムを作成しようとした場合、全ての譲渡された経験点はすぐさま儀式に参加したクリーチャーに返却される。君が作成に同意された魔法のアイテムを作る作業に1日でも費やした場合、魔法のアイテムが完成したかどうかに関わらず経験点は消費される。君が同意された魔法のアイテムを作る作業に1日でも費やした後に新しい魔法のアイテムの作成にかかるならば、経験点は消費され、(魔法のアイテム作成のルールに従って)失われる。

儀式に参加しているクリーチャー全員は魔法のアイテムが完成するまで同席していなければならない(アイテムの価格1000gpあたり1日、1日あたり8時間。ポーションは価格に関係なく1瓶作成するために1日がかかる)。儀式に参加しているクリーチャーが少しでも欠けている場合、魔法のアイテムを作成する作業は進行しない。1日のうち8時間が経過する前にクリーチャーが去った場合、その日の作業を作成時間に加算することはできない。

合わせ技(〈知識(宗教)〉8ランク、もしくは〈知識(神秘学)〉8ランク):君は儀式に参加している最低50%の消費経験点を提供したクリーチャーによって作成に同意されたマジックアイテムの前提呪文を提供してもらえる。そのクリーチャーは呪文が物質構成要素や焦点具、経験点消費を必要としている場合それを支払わなければならない。魔法のアイテムの作成中はこの呪文が使用されたことになり、作業を行なった日はその分の呪文を発動することができなくなる。

注:君がこの特技を持つNPCにアイテムの作成を依頼している場合(なおかつ君が前提呪文を提供している場合)、魔法のアイテムの種類にしたがって君の負担しただけの額が最終的な市価から割り引かれる(ダンジョン・マスターズ・ガイドのTable 7-33:Estimating Magic Item Gold Piece Values参照)。

同様に、君は儀式に参加しており最低50%の消費経験点を提供したクリーチャーから能力値、属性、キャラクター・レベル、クラス・レベル、クラス能力、種族、そして技能ランクの前提条件を作成に同意された魔法のアイテムに提供してもらうことができる。ただし次の特徴は提供してもらえない。君は術者レベルとアイテムを作成するためのアイテム作成特技を常に提供する。

特別:前提条件を満たして5つのタリスマン・オヴ・トランスフィアレンスを作成したキャラクターは、自動的にボーナス特技として《譲渡の儀式》を得る。

一行

特技 前提条件 利益
《譲渡の儀式》 〈知識(宗教)〉4ランク、もしくは〈知識(神秘学)〉4ランク、魔法のアイテム作成特技1つ 譲渡の儀式によって経験点を得る。

著者について

コーリャ・レイヴン・リケットは恐らくウェブサイトThe Waking Landsの製作者であることが最も有名と思われるが、Races of the Dragon とWeapons of Legacyの共同執筆者にして、Five Nationsに資料を提供し、魔道師大全の発売を控え、さらにウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社のウェブサイトにもいろいろな記事やエンハンスメントを提供している。

正門 > 戯の間 > D&D > 魔法のアイテム:消費経験点を譲渡する ]