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シナリオ作成入門
ロールプレイと変化する遭遇

ウォルフガング・バウアー著

「なんだ、この遭遇は会話するだけだ。バード、うまいことやってくれよ」

もし君の仲間たちがこういう態度なら、君がロールプレイを行う遭遇をまともに構築できないだろう。彼らは決まってこう言うんだ「なんてこった、ここは会話するだけか。おいバード、早いところイーグルズ・スプレンダーを頼むぜ!」ってね。

ちょっと待て。確かに僕は「ロールプレイする遭遇を作ろう」とは書いたぜ? だけど、いくつかの遭遇はステータス・ブロックを必要としないからって、準備が必要無いわけでも、慎重なデザインが必要無いわけでもないんだ。むしろ、君が戦闘よりたくさんの選択肢を準備しないといけない分、ロールプレイをする遭遇はより難しいとも考えられる。きちんとロールプレイする遭遇を準備するには、君と遊ぶプレイヤーが圧力やお世辞に対してどう応じるかという、深い洞察が必要になってくる。

なぜ神経質なまでに慎重なデザインを求めるかというと、それは僕が変化する遭遇と呼ぶもの、ロールプレイとして始まるが、簡単に戦闘が始まってしまうような遭遇のためだ。たとえば、デヴィルはパーティを殺してしまう前に、ちょっとしたおしゃべりをしたがるだろう。もしこの時、パーティがデーモン・ロードに仕えるディアボリストの一団と戦っていることが判明すれば、デヴィルは共通する目的のために逃がしてくれるかもしれない。

ロールプレイをする遭遇の前に、君はPCたちがその遭遇で何を得ることができるか、NPCは交換条件として何を提示してくるか、そして、遭遇の時に使う技能やクラス能力の三つを準備しておく必要がある。

パーティは何を得るのか

戦闘をする遭遇は、モンスターを殺して戦利品を奪うという簡単な流れがある。ロールプレイをする遭遇は、PCたちが切り抜けて経験点を得ても、逆にパーティが失敗しても、それを知ることができない分扱いが難しい。DMは遭遇の目的について常に明確な指針を持っているけれど、PCたちはその遭遇が通路の遭遇なのか、資源に関係する遭遇なのか、情報に関係する遭遇なのか、会話か戦闘かに傾く遭遇なのかに気付かない可能性があるからだ。

通路:パーティは隠されていたり閉ざされている場所に入ったり、重要な場所の情報を手に入れたり、城門や秘密の部屋へ入るための隠し部屋鍵や割符、合言葉を手に入れる。この遭遇で重要なところは、成功させると閉ざされていた場所へ行けるようになるということだ。

情報:パーティは重要な手がかりや、今後遭遇する相手の弱点、新しい呪文にふれる機会、もしくは陰謀や黒幕の決定的な情報が書かれた書物などを得ることができる。

資源:善や中立の属性を持つキャラクターは、彼らとパーティの信じるところが同じだと判れば、しばしば宝、回復、騎乗生物、魔法など資源の提供を申し出るだろう。これらはある種のモンスターに対するベイン効果が与えられた魔法の剣かもしれないし、治癒のポーション一式かもしれない、もしくはパーティが城壁の影に隠れるまでアンデッド王の気を惹いておける古代の金貨かもしれない。ほとんどのシナリオには、こういう宝を手に入れるための潜在的に好意を持った相手との遭遇がある。

戦闘を回避する:いくつかのロールプレイをする遭遇では、呪文やヒットポイントなど、貴重な資源を戦いに費やさずに通り抜けるための機会が得られる。これらの場合、対峙したモンスターが躊躇せずパーティを叩き潰せるだけの力を持っていることを、たっぷりと演出しよう。同時に、遭遇に時間をかけると黒幕の部下にパーティを追い詰める時間を与えてしまったり、敵の援軍がやってくる。そう、賭けはパーティが喋るほど、時間が経てば経つほど分が悪くなり――パーティの交渉役は肝を冷やすだろう。交渉が戦闘までにもつれ込んだ場合、黒幕はより強力な力を持って現れる。これは「変化する遭遇」としてもう少し詳しく解説しよう。

これら4つの分類で、ほとんどのロールプレイする遭遇を説明できるだろう。

ロールプレイする遭遇って?

D&Dのコミュニティには「ロールプレイする遭遇」という奇妙なことばがある。これは一般的に、何者かと会話する遭遇を指す。だけども、D&Dはロールプレイング・ゲームなんだ。プレイヤーズ・ハンドブックの最初にはこう書かれている「このダンジョンズ・アンド・ドラゴンズはロールプレイング・ゲームというジャンルを定義すると共に、ファンタジーをロールプレイングするためのスタンダードとして、このゲームは30年以上の歴史を持っています」とね。つまり、ロールプレイング・ゲームをしている限り全ての遭遇はロールプレイする遭遇じゃないかい?

そう、その通りなんだ。

「ロールプレイング」という言葉は「誰かがある状況や立場を想定し、故意に特定の人物や役割を演じること」(www.dictionary.comから引用した)を意味する。D&Dでキャラクターを作成してプレイしている時、君はキャラクターでないからいつもロールプレイしているということになる。

だければも、何年もの間にロールプレイング・ゲームをプレイするコミュニティの中での考えは変更を加えながら発展し、「ロールプレイする」遭遇は会話を行う遭遇、戦いになる遭遇は戦闘の遭遇と分けられるようになった。実のところ、「ロールプレイする」遭遇は交渉の遭遇や会話の遭遇と呼ばれるべきだと思う。けれどもコミュニティの主流がロールプレイとは会話(君が自分のキャラクターをロールプレイする方法が他にあるとしてもね)であると理解しているならば、この記事でもある種の会話する遭遇のことを「ロールプレイする」遭遇として記述している。ただ、会話以外にもキャラクターをロールプレイする方法があるということは理解しておいてほしい。

嘘と裏切り

ロールプレイしている人をひっかけるのは、ばかばかしいほどに簡単だ。ほとんどのプレイヤーはNPCたちが嘘つきであると考えないからね。悪人や二重スパイ、そしてつかみどころの無い暗黒街の住人。彼らは完全な善意(または完全な悪意)をもって真実を話さない理由があるかもしれない。

たとえば、あるNPCは親切なように見えて、本当はパーティの情報を横流ししている。奴らは死霊術師の城を襲おうとしているか? いつ? 奴らは秘密の地下通路を知っているのか? 以前この密告者は、パーティに秘密の地下通路について話しているのだ。もちろん、彼は死霊術師のもとへ走り、襲撃の情報を伝えようとするかもしれない。こうしてふたつの勢力は両天秤にかけられ――もし死霊術師が地下通路の警備を強化するなら、そこでの遭遇はより厳しいものとなる。

パーティは疑わしきに対して何ができるかって? これらから身を守るには、〈真意看破〉技能判定やディテクト・ライの呪文などが有効だ。前者のほうがおそらく後者より役にたつだろう。

モンスターは何を得るか

ロールプレイをする遭遇でパーティが交渉しているクリーチャーやキャラクターには、彼らなりの目的というものがある。彼らも食料、魂、金、何か他の貢ぎ物、おべっか、任務の完遂、もしくは情報などを求めている。モンスターが望むものを手に入れられなかった場合、遭遇は終了してパーティは失敗したことになる。これは学者から「私は君らを助けることができない」と言われることを意味したり、ジャイアントが契約ごとにうとく、なんでも食べてしまおうとすることを意味するかもしれない。

僕はだいたい、ロールプレイする遭遇を3つにわけて考えている。モンスターが求めているもの、DMとプレイヤーが実際に行うロールプレイ、そしてそれの成否を決定する技能判定の解決法だ。もしロールプレイで解決しなかった場合、しばしば戦闘に移行する。

一般的に、モンスターが何を求めているかは楽に決められる。PCが質問した場合も、ほとんどのモンスターは答えるだろう。もちろん、ほとんどのモンスターはちょっぴりより貰えるだけ貰うことを望む。これを値切ることができるか否かは、パーティのやり方と技能次第だ。

ロールプレイに技能とクラス能力を使おう

技能を使うクラスや上級クラスは、バードの知識やアーティフィサーの知識、〈交渉〉、〈威圧〉、〈はったり〉などを使うことができ、それらをロールプレイをする遭遇で活かすことができる。では、プレイヤーとDMの会話に代わるものとして、これらをどう扱えばよいのだろう?

これらは君と遊ぶプレイヤーが楽しめているかどうかによる。もしプレイヤーがこれらの技能ランクにポイントを費やしていた場合、それを使わせるべきで、同様に別の技能に費やしていて交渉能力に劣っている場合、問題解決の役に立ちづらくなるだろう。

僕は二方面でことを構えるのが好きだ。まず、全てのロールプレイする遭遇ではNPCが取っている最初の態度を態度表(PHB72ページ)で決定する。これでPCたちが腹を割って話し合うのがどれだけ難しいかも決定される――非戦闘手段で解決できるかどうかには関わらないということを、君には思い出して欲しい。もしパーティが敵対的だったり否友好的だったりするモンスターをなだめる技能に欠けている場合は、気の毒なことだ。彼らはヒット・ポイントや呪文、その他の資源を使い、最後まで戦わねばならない。

第二に、もしひとり以上のPCたちが〈交渉〉技能や【魅力】判定で敵対的や非友好的なモンスターの態度を中立かより良い状態にしたなら、こそこそした密告者やひげをしごく悪人、よだれをたらすモンスターを演じ、腹を割って話し合おう。そして、その会話を楽しんでくれ。密告者は危機が迫ったと思えばこう言うはずだ「さて、あっしはこれを喋ったもんだか……」とね。会話しているプレイヤーには、〈交渉〉、〈はったり〉、〈情報収拾〉なんかの判定をするように言っておこう。

君は早めにロールプレイによる技能判定の基準を作り、それに従って裁定を下すといい。大雑把な基準は、難易度12にパーティのレベルを足したほどだと考えている。これは技能スキルを使うキャラクターが、技能ランクと能力値ボーナスを足せば75%の成功を出せるところから来ている――この場合、技能ランクも能力値ボーナスも無いキャラクターの成功率は50%以下になる。

その他のオプション

パーティに高い技能を持つキャラクターがいなかったり、重要な判定をしくじったらどうなるかって? それにはいくつかの選択肢がある。いくらかのモンスターはわいろや貢ぎ物を受け取る。呪文や〈変装〉など、別の手段を使う。何かの道具や任務、情報を要求するNPCだった場合、彼らはそれを要求するかもしれない。社会的な技能判定を失敗した時、パーティは必ずしも取り返しがつかない失敗をしてしまうわけではないのだ。

変化する遭遇:ロールプレイから戦闘へ

戦闘をより楽しくする手段のひとつは、最初にロールプレイをする遭遇として始めることだ。騎士がパーティの仲間をランスに刺さった子豚のようだとほらを吹いて侮辱したり、ジャイアントが食事を弄んだり、仲間のふりをした悪のウィザードが裏切る前夜見張りに参加するなど、こうすることで単にダイスを転がす以上の楽しみを得ることができる。パーティが彼らに会う場合、早めに会話を行わせよう――そう、態度を敵対的に設定してね。

変化する遭遇の仕掛けは簡単だ。主要なNPCは例え敵対的であっても、すぐに攻撃を行うことはない。もちろん、彼はパーティを憎んでいて彼らに不幸が訪れることを望むが、第一に彼らを弄びたがっている。遭遇のうわべはパーティと相手がロールプレイをするものとして演出される。PCの誰かと舌戦を繰り広げたり、一騎打ちを申し込まれたり、彼らの部族や家族を侮辱する場面を用意しよう。NPCは自分が主導権を握って攻撃できるようになるまで、その機会を待つだろう――時間を費やす理由は、お気に入りの部下を呼び出す、町の(悪ないしは堕落した)衛兵に命じて隠れているアサシンの手助けを打ち合わせる、悪の司祭が神の恩寵を得る、など様々なものがある。

こうしたロールプレイの場面を簡単にする方法のひとつとして、隔たった場所同士で行うというものがある。NPCは塔の屋上や徐々に跳ね橋が下りていく堀の向こうといった、少々安全な場所から挑発的な台詞を吐く。パーティの誰かが「奴には言わせておけ」と言っている間、他の者たちは準備を整えているのだ。

最終的にパーティと戦う時、主要なNPCは(対決を予想していたので)呪文や行動の準備があり、ことによってはパーティがそうするように、財産を隠している場合もある。もしNPCが〈はったり〉や〈芸能(演劇)〉を高いランクで持っている場合、彼はおめでたい英雄たちを食事に誘う(食事とワインは毒入りだ)ことだってあるかもしれない。こんな場合、パーティにセーヴィング・スローと〈捜索〉判定を行わせるのは良くない手だ。〈交渉〉と〈真意看破〉判定を行わせよう。〈捜索〉判定を行わせるということは、プレイヤーの前に何かが起こる予兆の大きな赤い旗を出すようなもので、そうしたらほとんどの人は「キャラを壊してまで」キャラクターに戦闘の準備を行わせ始める(誰かが〈視認〉判定に失敗してもだ)。

その代わり、黒幕は慎重に時間をかけてパーティを騙さないといけない。誰かが「あいつは俺たちで遊んでいるんだ」と言われるまで、NPCは巧みに正体を隠してないといけない。こうして得る裏切りの感覚は本物だ――君はDMとして、おめでたいプレイヤーたちを騙したのだからね。そしてプレイヤーが毒を盛られたワインを飲んで頑健セーヴィング・スローを行ったら、隠れている弓使いを見つけるために〈視認〉判定を行わせ、死霊術やらの呪文に気付かせるため〈呪文学〉判定を行わせるというわけだ。

まとめに

ロールプレイする遭遇は慎重なデザインと繊細な作業によって最大限の効果を与えられる。それが成功した時は普通の戦闘よりもはるかに長い間、心に残っているだろう。

著者について

ウォルフガング・バウアーは多くのシナリオをものしたライターで、Dungeon Magazineに『Kingdom of the Ghouls』や『Gathering of Winds』といったシナリオを投稿し、ウィザーズ・オヴ・ザ・コーストからも近日発売予定がある。彼はオープン・デザイン・ブログでシナリオの改造法や専門家の目から見た助言などを支援者に提供している。

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