目の前には内股の肉をこそげ落とされたガンダムの右腿。  普通に組み、立たせるだけならば問題はない。しかし、今それを前にしている若者の名は京田四郎。後に狂四郎として天下に名を馳せる修羅が一人である。  四郎、いかにする。と射るような視線で居並ぶ門下生が注視する中、彼は臆せずパテを手に取って内股に肉を盛る。  乾燥を待ち、原形に沿って細工デザインナイフで筋彫りを施し、三宝に載せ倉田の検分を待つ。 「青いのう、四郎」  四郎は目をかっと見開き、倉田を睨む。 「巧い。数年かからずに主の手業は儂を超えるじゃろう」  が、手業ではなんともならんものもある。そう言いながら小肥りの師範が手を叩くと、小姓が三宝の上に何かを捧げ持って出てくる。  同じキットの、二つ目。  倉田は懐から四郎にあてがわなかった左腿を出すともう一つのキットを無造作に開封し、そちらから右腿を取り出す。 「二個一」 「師範が二個一を」 「あのような小僧めに」  小波が広がるようなざわめきがおさまるのを待ち、倉田はデザインナイフを取り出した。