神話 世界と精霊の誕生  全てが混じりあう混沌の中にぽっかりと泡が生じたことから、世界の歴史は始まります。  混沌から分かたれた泡の半分には昼、もう半分は夜で満たされていました。泡は混沌に揉まれながらくるくると廻り、昼と夜が混じりあって黄昏と精霊たち、そして時が生まれました。  黄昏は精霊と共に海と大地を生みました。後にウルゲンと呼ばれるようになるこの二つは泡の中心に留まり、精霊たちはそこに降りたちます。 獣、草木、岩の誕生  海と大地を見回した精霊たちは自分たち以外に泥と水しかないことを寂しく思い、泥と水を自分たちが誕生した昼と夜のように混ぜ合わせ、自分たちに似せて獣、草木、岩などといったクリーチャーものを造りました。  これらは海と大地に放たれ、世界を賑やかしました。  しかし、精霊たちと言葉を交わせるようなものは生まれず、精霊たちは自らの隣人を求めることとなります。 人間の誕生  いくら精霊たちが手を替え品を替え隣人の原形を作ってみても、言葉を交わせる存在は生まれません。途方に暮れていた精霊たちに叢原狼の精霊、ガラガラが泡の向こうから混沌を汲みあげて泥と水に混ぜ込んでみることを提案し、数柱の精霊が泡の果てまで旅をしました。  泡の果てでガラガラたちは混沌を汲みあげ、ウルゲンへと持って帰りました。精霊たちは泥と水、そして混沌を練り上げて人間の原形を造り、全ての精霊たちが誕生を願う息吹を吹きかけると始めの人間は目を開け、精霊たちに話し掛けました。  ついに精霊たちと言葉を交わせる存在、人間が誕生したのです。  また、この時使い切られなかった混沌は精霊が自分のクリーチャーに与え、知恵を持った獣の王たちが誕生したと言われています。 人間の発展  人間もまたウルゲンに放たれて大地の一員となりました。混沌からもたらされた知恵と生命力で、人間はあっという間にウルゲンの至る所に住むようになります。  精霊との間に愛を語り、子をなす人間もあり、獣人や森人、岩人の祖先となりました。  こうして、人間は精霊と共にウルゲンを支配する種族となったのです。 世界の危機  人間が隆盛を窮めていた頃、世界を飛び回っていた鴉の精霊、ガイアッハは泡の果てが歪み、今にも混沌が泡の中に流れ込みそうになっていたのを見つけ、他の精霊に知らせました。  精霊たちは何度も話し合い、泡が壊れそうになっているのは混沌の力を持った人間たちが栄えすぎたせいで泡の調和が崩れ、世界の外にある混沌と引き合っているのだと結論づけました。  結論が出た後も人間を滅ぼすか見過ごして世界を滅ぼすかで長い議論となりましたが、人間とてウルゲンの一員には違いなく、全て滅ぼしても泡の調和は崩れてしまう恐れがあるため、精霊たちのクリーチャーに人間を襲わせて力を削ぐという方法でとりあえず様子を見てみるという結論に落ち着きました。  また、あまり人間と親しすぎたのも良くなかったと反省した精霊たちは、人間の前に直接現れることをこの時以来控えるようになりました。 人間の危機  精霊たちの話し合いで決定された人間の危機は突然やってきました。ウルゲン中の獣が凶暴になり、人間を襲い始めたのが発端でした。美味しい実をつけていた蔓草は人間の首を絞めるようになり、豊富な金銀宝石が眠る鉱山には岩が動く化け物が徘徊するというように、人間が生きるにあたり大切なものが次々と人間から奪われていったのです。  人間の村や街もその頃は柵や城壁が無かったため、次々と襲われて破壊されていきました。生き残った人々は寄り集まり、激変した世界に適応するために安全が確保された洞窟の中や柵で囲まれた中に村や街を再建していきました。 現在  もはや危機の時代から数十世代が過ぎ、人間は持ち前の適応力でこの厳しい世界に適応しています。村や街は腕の立つものが戦士として警備しており、囲みの中で暮らす分にはそれなりの安全が確保できるようになりました。  しかし、囲みの中だけで生活を満たせるわけはなく、飢えを満たす食べ物、厳しい冬を越すための毛皮、武器や生活用具を作るための鉱石などは凶暴なクリーチャーを倒して得ないといけないことには変わりません。  このため、ウルゲンに住む人々の多くは年頃になると武術や祈祷の修行をして、生活のために囲みの外へと出て行くのです。